TOMOKI 432 Tenor
昨年1月のお引き渡しから丸一年が経ちました。この時の音の出方はまだ硬めだったんです。一年中演奏活動をする人の楽器の成長の早さに改めて驚きました。スプルーストップは弾き込むほどに音の出方が変化していくものではありますが普通の人が何年もかけて育てたレベルの出方にもうなってます。一体どんだけ弾いてるんだろう。
メンテ里帰りしてきて各部のチェック。12Fで1.8mmの超低弦高。ナイロン弦でこの低さはなかなかシビアなセッティングになりますね。プロ仕様です。
ボディ全般に戦いの痕跡(スクラッチ痕)だらけだったんですが綺麗にリフィニッシュしてピカピカです。新品で作った時よりも少し塗装の内容を変えました。打痕が付いても木部まで行かないように下地のシーラーを厚めにして土台をしっかり作り上げてから軽めにラッカークリアを3回吹きつけて乾燥硬化させました。多分これで去年よりタフな塗膜に仕上がってると思います。
ピックアップ、プリアンプ基板に付着していた粉塵を綺麗に取り除きました。Mi-Si、いいピックアップです。
スピーカーに繋いでサウンドチェック。バランスもバッチリ。「またしっかりステージで働いてきてね」と一声添えて東京へ発送してきました。1月はジグ製作に加えてTOMOKIモデルも含めて3台のメンテナンス作業、製作中の6本(うち3本は来週中に仕上げ予定)の実質9本を同時進行で進めていたので1本も新作ができませんでした。ちょっとキャパオーバーでしたね。何せ工房が狭いのでせいぜい5本までが置き場としても限界みたいです。木工作業の凄まじい粉塵と、それを許せない塗装作業やメンテ作業を全部同じ机でやるのもそろそろ終わりにしたいな。
土曜日は娘らを名古屋駅前の学習塾に送迎の日。朝10時前に送って一度工房まで帰って仕事。その後、午後3時にまた名古屋へ迎えに行きます。昨日はその合間に名古屋市営地下鉄の太閤通駅からすぐのRカフェさんにお邪魔してきました。一年ぶりです。
やっぱり良い雰囲気のカフェですね。コの字型に中庭を囲んだ家の作りになっていて窓辺の席は静かに読書するも良し、しっとりとウクレレ弾くのもよし。さらに店内には今、G-Laboさんのウクレレがたくさんあって試奏できるんです。
これめっちゃ良かったですよ。良かった以上に僕にとっては良い勉強になったというか。あ、なるほどこう言うアプローチの仕方もあるんだと。ユーザーのことをしっかり考えて作ってある点が随所にある。元タカミネの職人さんがベトナムで指揮を取って現地の職人と一本一本製作しているそうです。その経緯だけとっても凄い行動力ですよね。単身東南アジアへ行ってホーチミンで生活しつつ理想のウクレレを日本に向けて作るなんて物凄いコミュニケーション力だなと想像しました。それでこれだけのものを作って結果を出してる。負けてらんないや。頑張ろう。
Rカフェを後にして娘らを拾いにまた駅前にやってきました。相変わらず名駅前は賑やかです。
片道1時間、今日は4時間車の中で色々と物思いに耽ってました。どんなものを作るにせよ感動がないとモノは売れない。じゃあ自分はどんなウクレレに感動するのか。ここは個人差のある話だから一概には言えないけど自分なら小さいボディから想定以上の音圧と綺麗な旋律が飛んできたときだと思う。
他にも色々考え事。たとえばかなりテクニカルな話だけど、生音と電気音では同じセッティングではそれを両立させれないジレンマをなんとかできないものか…とか。このジレンマっていうのは簡単に言えばピックアップ搭載時にサドル底面の調整が必要になって3弦の音圧を意図的に削がないとスピーカー音量のバランスが取れないので生音の3弦C音のあの心地良い音圧とトレードオフになってしまうこと。それから他にもソプラノやコンサートの小さいボディの中にピックアップシステムを突っ込むことでボディ内の反響の仕方も変わるし重くなって硬い音になることをどうにかできないものかとか。あれこれ考え事しているといつも結果的にはライブ演奏とかではなく単に窓辺でソプラノをポロポロと生音で静かに弾くのが自分なら一番ハッピーだなっていう結論になる…。
そんなどうでもいい妄想はさておいて、帰って作業の続き。先月の遅れを取り戻すべし。来週中には3本とも仕上げます。ではまた。
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