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スクラッチ痕には蜜蝋

メンテナンスで里帰りした2019年製ソプラノロング

 

 

ほんとに嬉しいことなんですがこうしてメンテナンスで工房に里帰りしてくるウクレレの大半がケースを開けるとまず激しいスクラッチ痕(弾き傷)を見せてくれます。毎日どれだけ弾いてくださっているんだろうとニンマリほころんでしまう瞬間です。製作者としてこれほどの栄誉はありません。うちのウクレレの表板は針葉樹系のスプルースやシダーが多いのでこうしたスクラッチ傷がつきやすいんです。塗装の下地まで抉れて(えぐれて)しまって木部が露出したまま乾燥した場所に晒されると板の水分が出ていって割れる要因になってしまう場合があります。そこで蜜蝋を少量(小指の爪半分程度)をウエスに添付した上で板の抉れ箇所に塗り込みます。小一時間ほど放置してから別の綺麗なウエスで拭き取ってメンテ完了です。夏場は湿気が多いので平気ですが冬の乾燥時にはこの一手間が結構大事です。蜜蝋はあくまで弾き傷が付いてから使うものなので新品から必要なものではありません。指板に塗ってしまうとベタついて弾きにくくなるので使えません。指板の清掃、保護にはオレンジオイルを使ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

ローズ製ビルドインピックガード
ローズ製ビルドインピックガード

三年前のフルモデルチェンジからはこうしたスクラッチ痕に対応する意味もあって表板のこの箇所に硬いローズウッド材のビルドインピックガードをあらかじめはめ込んでおく仕様を追加しました。どれだけ強くストロークして弾き傷を付けても柔らかい針葉樹木部が露出する事態にはならないのでオススメの仕様です。

 

 

 

 

 

 

 

今年からオーダーウクレレのお引き渡しの際に普段工房で使っている蜜蝋を小分けしたものをプレゼントさせて頂いてます。スクラッチ傷が付いてから使うものなので数年先まではこれで十分な量かと思います。