#355 WM440AH Slotted Tenor CUSTOM (Hawai'i'Amakihi)
ハワイ・アマキヒに慈愛の祈りを込めて
rosetta type :WM
scale :440mm 19fret end
puff ring type :A(Avalone)
binding type :H(Hawaiian Koa)
body type :tenor
top 最高級米杉(aged)
side 最高級インドローズ (aged)
back 最高級インドローズ (aged)
neck Mahogany
finger.b Ebony
head face plate ジリコテ
bridge Ebony
strings Ancestor's弦
peg SEP780
Hawai'i'Amakihi
滝を見上げるハワイ・アマキヒ
Waipio Valley
ヒイラヴェの滝伝説
”ここは、王家の谷、と呼ばれていて、マナ(エネルギー)の非常に強い、神様に守られている場所としても知られています。
昔は王族しか住めなかった、神聖な場所でした。
ハワイがまだ王国だったころ、王族と一般人との結婚は禁止されていました。しかしある時、王族の娘と村の若者が恋に落ちます。お互いに一緒になることは無理だと知りつつ思いは募るばかり。決して結ばれることのない運命を嘆き悲しみ二人でこの谷に身を投げてしまいました。
そして娘はヒイラヴェの滝となり、滝の水は娘の涙となって流れ続けています。
若者は滝の下で岩となり、いまでも愛する娘の涙を受け止めているのです。
今は王朝もなく、滝を見上げる様子、そして鳥が歌う様子を踊る伝統だけが残りました”
今回使った米杉は場所は言えませんが古参のクラシックギター製作家用に向けて用意されていたものを廃業を理由にご縁あって卸して頂いた年代物のシダーです。おかげでよく乾いていて完成当初と思えないほど澄んだ響きを放っています。
このローズウッドも年代物でかなり古いものを使っています。つまり今回のシダーローズはシーズニングがかなり進んだもの同士。想像通り響きも豊かでローG仕様にしました。
木材にもいろんなストーリーがあって私のところに今あるんだといつも感謝しています。ギターになるはずだった木が改めて私のもとでウクレレとして誕生する。それをハワイアンコアのバインディングで飾り、ワイピオ渓谷に残る神話をモチーフにハワイ・アマキヒを指板に施しました。ハワイ諸島に暮らすミツスイの仲間で実際のアマキヒは日本の鶯みたいな見た目なんです。でもそのままだと和風になっちゃうのでハワイのイメージに変えました。
スロッテッドヘッド
今年取り組んだ一番大きなことはまさにこのスロッテッドヘッドの開発でした。春先に試作用にネックを数本作りました。課題を洗い出してテンプレートを作り直すことの繰り返し。写真で完成形を見るとどこに苦労したのかわかりませんね。もっと具体的に説明します。普通スロッテッドヘッドの側面はストレートです。クラシックギターのヘッドを思い浮かべていただければ分かるかと。あれはペグの土台部分が取り付けられるために平らである必要があるからです。カマカテナーも同じ、側面はまっすぐです。ペグのプレートに対してまっすぐな側面を持ったデザインが王道なんです。そこをもっとカーブを取り込んだデザインにしたかった。SEPのプレートの長さが一つ33.5mm、二つくっつけて並べて最低でも67mmのストレート部分がいる。そこからカーブさせるのとハの字にテーパーさせることを取り入れたデザインに持っていくために何度もテンプレートを作りました。ヘッド角度も弦がポストに対しての進入角に合わせて少し浅めにしたりと色んな工夫が施されてます。
テナーを何台も作るようになって結局のところ先人が出した答えをトレースすることに行き着くのは他のあらゆる経験と同じでした。多分、弦楽器ってスケールごとに適切なテンションの掛け方がある程度定まっていてそれによってナット高、指板厚、それに呼応したブリッジ(サドル高)、ブリッジ弦穴までの進入角も考えられているってことを今更勉強し直すと言う一年になりました。一体この仕事やって何年目だって自分に突っ込むこと多し。理系頭でもっと物作りのセンスのいい人は一年二年で全部理解して余計なことはしないんだろうな、なんて考えたり。
自分みたいに相当不器用で設計図もなく何もない机の前で腕組みして座って全部のイメージを頭の中で組み立てて予想で突き進むタイプは同じ結論に至るまでこうして二十年もかかってしまうわけで。それでも周りの人が面白がってオーダーしてくれるのでなんとか今日も工房続いてます。はい。感謝です。全モデルとも図面はありません。あるのはヘッド、ボディのテンプレート、それらを作るためのジグのみです。あとは全部、手が経験して記憶してます。なかなかおバカなタイプだと言う自負だけはかなりあります。
こちらのカスタムLow-Gテナー、師走展で即売対象です。ご興味ある方ぜひ。