木材主観図鑑

 

ウクレレは木で作られるので当然何の木を使って作るかで音が変わってきます。ここに書いておきたいのはあくまでも製作者である私が使った場合の木材ごとのキャラクターです。料理と同じで同じ具材であっても料理人によってできるものは変わリます。マホガニーウクレレでもAさんが作ったものとBさんが作ったものは同じ音にはなりません。ということでウクレレ製作家坂井が主に使ってきた木材の主観的な図鑑です。

表板材

表板に最も適しているのは針葉樹です。柾目の材は縦方向に引っ張られる力に対して強く、弦の張力にもよく耐えて比重が軽くてもよく振動します。ウクレレに用いられる主な針葉樹はトウヒ属マツ科のスプルースと米杉(ウエスタンレッドシダー)の二つがあります。軽くしなやかで音量も出るウクレレを作るための近道は良材の針葉樹を使うことです。

 

シトカスプルース

シトカスプルース
シトカスプルース

アラスカ州シトカ市で発見されたことに由来するスプルースです。品質グレードに幅があって高級なものはマーティンギターのD28やギブソンJ45などにずっと使われています。うちのウクレレで使っているシトカももちろん最高級品質のものです。製作者目線でシトカを採点すると「フラットでクセがなくて素直なサウンド、とても扱い安い優等生」と言ったところです。ジャカジャカ弾いてもしっとり爪弾いてもきちんとレスポンスしてくれます。

 

 

(sound character )

シトカ単体での評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=4

しっとり感=4

粘り感=4

アタック感=4

サスティン=4

熟成感=4

 

 

※キラキラ感=高音の艶

※ジャカジャカ感=ストローク弾きでのレスポンス

※しっとり感=音の暖かみ

※粘り感=音のコシ

※アタック感=強めに弾いた際のレスポンス

※サスティン=残響感

※熟成感=弾き込むほどの音の成長感

 

 ※5段階評価です

 

ジャーマンスプルース

QVサイトより拝借
ジャーマンスプルース

スプルースの王様的存在。高級クラシックギターはほとんどこのドイツ松が表板に使われています。理由はサウンドと材質の安定感。はっきりとした音像、レンジの広さ、レスポンスの良のどれをとってもピカイチです。ジャーマンと謳っていてもユーゴスラビア産のものなどが出回っていたりしますがそもそもドイツ松=オウシュウトウヒは本家北米スプルースの代替材としてヨーロッパで使われてきた経緯をもつトウヒ(クリスマスツリー)です。音響的にはインドローズとの組み合わせがレンジが最大限に発揮されて最も相性がいいと感じます。マホガニーとの相性もよくその場合はアタックが強調されます。高価なスプルースですがそれに値する最良の表板材だと思います。

 

(sound character )

ジャーマン単体での評価

キラキラ感=5

ジャカジャカ感=4

しっとり感=4

粘り感=4

アタック感=4

サスティン=5

熟成感=4

 

 

 

 


ベアクロウ杢

ベアクロウシトカ
ベアクロウシトカ

ちょっと変わり種です。熊の爪で引っ掻いたような模様だからベアクロウ杢と呼ぶそうです。木の表面に出る変わった柄のことを杢と言います。玉杢、縮杢、虎杢など一枚板の銘木屋さんに行くと現物を拝むことができます。普通のシトカスプルースより硬質なサウンドになる傾向があります。サウンドというよりはルックスの希少性の意味で通常のシトカよりも高価になります。

 

(sound character )

ベアクロウシトカ単体での評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=4

しっとり感=3

粘り感=3

アタック感=4

サスティン=4

 

 

 

米杉

米杉
米杉

シダーはなんと言っても出来立てほやほやからよく鳴ります。とても柔軟性があってあらゆる針葉樹の中で最もソプラノ、コンサートに適した材ではないでしょうか。シダーローズ、シダーマホどちらにせよ最良のペアです。うちのウクレレにも一番相性のいい表板材はやはりシダーです。張りのあるパンチの効いたサウンド、軽やかなのに余韻もある。とても柔らかいので繊維方向に欠けやすく製作は慎重に加工していく必要がある木でもあります。ギターだと針葉樹の王様はドイツ松かもしれませんがちっちゃくて軽いウクレレにとってはシダーの方が合ってると思います。うちのシダーはよく乾いた古い材を使ってるのでオススメです。

 

 

(sound character )

シダー単体での評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=5

しっとり感=4

粘り感=5

アタック感=5

サスティン=4

熟成感=3


サイドバック材

ホンジュラスマホガニー

QVさんの画像拝借しました
Martin 3M

このホンマホという木材は昔と比べて良いものが極端に減っている現実がまずあります。現在よく流通している苗木をオセアニア地域に移植して育ったもの、今は入手困難になっている中米原産のホンマホ。さらに古いホンマホは本当に貴重なものとなりました。昔からストックしているか何かのご縁で手にいれるかしかありません。マーティン3Mのヴィンテージウクレレを弾けば納得のあの深みがあってアタックの強い旨みしかないような出音はやはりヴィンテージマホガニー素材そのものの人懐っこさから生まれるものだと思います。

 

 

(sound character )

オールホンマホでの評価

キラキラ感=3

ジャカジャカ感=3

しっとり感=5

粘り感=5

アタック感=4

サスティン=2

熟成感=4

 

 

(sound character )

シダーマホでの評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=4

しっとり感=4

粘り感=3

アタック感=4

サスティン=3

 

 

 

(sound character )

シトカマホでの評価

キラキラ感=5

ジャカジャカ感=4

しっとり感=4

粘り感=3

アタック感=4

サスティン=3

 

 

(sound character )

ジャーマンマホでの評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=4

しっとり感=4

粘り感=3

アタック感=4

サスティン=3

 

 

 

サペリ

Taylor GS
Taylor GS

アコギではお馴染みの木でテイラーがよく使ってます。サペリ港が名前の由来で、滑らかでシルキーな木肌が綺麗です。時にサペリマホガニーなんて呼ばれたりもします。比較的流通が安定しているので安価に入手できます。マホと比較してやや硬質で重量感があり、その分サスティンが期待できるのでマホガニーのようなルックスだけどローズの弟分程度の程よい反響音が欲しい時にサイドバック材としてよく使います。その場合、表板にはスプルースやシダーを使うとかなりグッドなサウンドに。シダーサペリのソプラノはジャカソロにも歌の伴奏にも相性がよく使い勝手抜群です。オールサペリで作ったりもしますがその際は表板だけかなり薄く仕立てあげます。作家もののウクレレでシダーサペリを使っている事例はあまり見ないので所有しているとちょっとだけ自慢できるかも?

 

 

 

(sound character )

オールサペリでの評価

キラキラ感=3

ジャカジャカ感=3

しっとり感=4

粘り感=3

アタック感=3

サスティン=3

熟成感=2

 

 

(sound character )

シダーサペリでの評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=4

しっとり感=4

粘り感=3

アタック感=4

サスティン=4

 

 

(sound character )

シトカサペリでの評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=4

しっとり感=4

粘り感=3

アタック感=3

サスティン=4

 

 

(sound character )

ジャーマンサペリでの評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=3

しっとり感=4

粘り感=3

アタック感=4

サスティン=4

 

 


インディアンローズウッド

珍しい白太入りのインドローズ
珍しい白太入りのインドローズ

ウクレレにとって最良の表板がシダーなら、そのサイドバックは間違いなくインドローズです。音量もよく出る、余韻も長い。深いローストコーヒー色も素敵。加工時もとても素直で扱いやすい。これ以上ないサイドバック材だと思います。ちょっとお金に余裕があってもっと希少なローズ系、例えばブラジリアンローズとかアマゾンローズとかに手を出したくなる時もあるかもしれませんがいい音&弾きやすさが欲しいのなら色気を出さずにインドローズ一択です。

 

(sound character )

シダーローズでの評価

キラキラ感=5

ジャカジャカ感=4

しっとり感=5

粘り感=4

アタック感=4

サスティン=4

 

(sound character )

シトカローズでの評価

キラキラ感=5

ジャカジャカ感=4

しっとり感=4

粘り感=3

アタック感=5

サスティン=4

 

(sound character )

ジャーマンローズでの評価

キラキラ感=5

ジャカジャカ感=3

しっとり感=4

粘り感=4

アタック感=4

サスティン=5

 

 

 

 

ハワイアンコア

マスターグレードのコア
マスターグレードのコア

言わずと知れたハワイの銘木、ハワイアンコアです。マスターグレードの虎杢を入手するには結構なお金がかかります。出回った時にポンっとすぐに気前よく手に入れるしかない高級材です。昔から超高価ですが最近さらにお高くなりました。仕入れ時が非常にハードルの高い材、いや財です。

 

(sound character )

ハワイアンコアの評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=3

しっとり感=5

粘り感=3

アタック感=4(薄く使えば)

サスティン=3

熟成感=3

 

 (sound character )

シトカコアでの評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=4

しっとり感=4

粘り感=3

アタック感=4

サスティン=4

 

(sound character )

ジャーマンコアでの評価

キラキラ感=5

ジャカジャカ感=4

しっとり感=4

粘り感=3

アタック感=4

サスティン=4

 

(sound character )

シダーコアでの評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=4

しっとり感=5

粘り感=3

アタック感=4

サスティン=4


ブラジリアンローズ

通称ハカランダ
通称ハカランダ

南米のローズウッド、ハカランダ。言わずと知れた超が付く高級材です。ワシントン条約で規制されているので伐採禁止となってます。なので仕入れるものは英国家具のレクイエム材か大昔のストックが稀に流通する以外ありません。硬く重く割れやすく加工はとても神経費やします。サイドを曲げる時の蒸気が甘い香りです。肝心のサウンドは重厚そのもの。

 

(sound character )

ジャーマンハカランダでの評価

キラキラ感=5

ジャカジャカ感=4

しっとり感=3

粘り感=5

アタック感=4

サスティン=5

 

 (sound character )

シダーハカランダでの評価

キラキラ感=4

ジャカジャカ感=5

しっとり感=4

粘り感=5

アタック感=4

サスティン=5